健康食ブームの高まる近年、腸活やダイエット・生活習慣病などさまざまな健康効果で注目されている「押し麦」。
押し麦は、病気の予防や健康の維持に関心を持つ人・美容意識の高い人から支持されている人気の健康食品です。
いざ、スーパーで購入しようとすると「もち麦」が隣り合わせで並んでおり「何が違うの?」「どちらを選べばいいのかわからない!」「何となく選んで買っている…」という人はいませんか?
「押し麦」も「もち麦」も大麦の仲間、白米と比較して食物繊維の量が多く値段も安価で、手軽に食物繊維をとれる食材です。
白米に混ぜて食べるのが一般的ですが、そのほかにもサラダやスープの具材として使うこともできます。
今回は、押し麦・もち麦の特徴や違い・麦ご飯の炊き方・栄養と健康効果について紹介します。
1.麦ご飯とは
麦ご飯は、お米に大麦を混ぜて炊いたご飯のことです。
お米だけで炊く白米とは異なり、麦の独特の香り・やや固めで粘り気の少ない食感・素朴でやさしい味わいが特徴です。
・大麦の分類
まず大麦は六条大麦と二条大麦の二つに分けられます。
六条大麦は麦ご飯・麦茶に使われ、二条大麦はビール・焼酎の原料に使われます。
六条大麦には粘りの強いものから弱いものまであり、粘りの強い大麦が「もち性」、粘りが弱い大麦が「うるち性」です。
もち性にあたるのが、その名のとおり「もち麦」、うるち性が「うるち麦」です。
うるち麦を調理しやすく加工したものが『押し麦』です。
また、普通の『押し麦』の他に、胚芽を残した状態の麦を押しつぶした「胚芽押麦」や押麦にビタミンB1とB2をプラスした「ビタバァレー」があります。
メーカーによって商品名の表示が紛らわしいものもあります。
私は、商品の裏面の成分表記「原材料名」を見て確認しています。
・押し麦ともち麦の違い
粘りと食感の違い
大麦の粘りと食感は、「でんぷん」と深い関係があります。
大麦に含まれるでんぷんには「アミロペクチン」と「アミロース」と呼ばれる2種類があります。
アミロペクチンには炊くと粘りを出す働きがあり、アミロースにはその働きがないため、アミロペクチンが多いほど粘りが強くなります。
もち麦はアミロペクチン約100%で、粘り気が強くてモチモチとした食感です。
一方、押し麦は、粘りのないアミロースを約20%含んでいるので、粘り気が少なくプチプチした食感です。
お米にも「うるち米」と「もち米」がありますが、それと同じですね!
ちなみに、麦とろご飯に使われるあっさりとした食感の大麦は、押し麦です。
加工方法の違い
「もち麦」と「押し麦」では※精麦方法が少しだけ違います。
・もち麦の精麦方法
外皮を取り除く⇒蒸す⇒磨く
磨く作業がなされ、つるりとした丸い形になるため「丸麦」ともいわれます。
外皮一部残した加工です。
・押し麦の精麦方法
外皮を取り除く⇒蒸す⇒つぶす
ローラーで潰されるので、その名のとおり「押し麦」です。
押し麦の潰す過程があることで、吸水がよくやわらかい食感となります。
外皮を完全に取り除いた加工です。
※精麦とは大麦の外皮を剥いて加工する過程のこと
栄養価の違い
もとは同じ大麦ですが、食感や製造過程など少しずつ異なる「もち麦」と「押し麦」。
栄養価の違いはあるのでしょうか?
「もち麦」は精麦で外皮を一部残しておくため、外皮を完全に取り除いた「押麦」に比べて、大麦β-グルカンを多く含んでいます。
しかし、大麦(もち麦・押し麦)は、栄養価の高い食材であることは間違いありません。
白米よりも大麦を混ぜた麦ご飯の方が、食物繊維・ビタミン・ミネラルが豊富に摂取できます。
2. 麦ご飯の栄養
・食物繊維
食物繊維には、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維があります。
麦ご飯には水溶性食物繊維はもちろん、不溶性食物繊維も含まれています。
大麦β-グルカン(水溶性食物繊維)
麦ご飯に入れる大麦には、他の食材ではなかなかとることができない水溶性食物繊維の「大麦β-グルカン」がたっぷり。
大麦β-グルカンは、体内でゲル状になり、胃の中にある食べ物を包み込んで、糖質の吸収をゆるやかにし、血糖値の急激な上昇を抑えてくれます。
さらに大麦βグルカンが素晴らしいのは、次の食事までその効果が持続されることです。
これをセカンドミール効果といいます。
これらの働きは、糖尿病の予防・改善に効果があります。
また、大麦βグルカンは、コレステロールを体外に出す働きとコレステロールの吸収を抑制する働きがあるため、LDL(悪玉)コレステロールを下げることができます。
その結果、動脈硬化や心筋梗塞の予防にも効果があります。
その他、大麦β-グルカンは善玉菌のエサになり腸内環境を整えてくれる効果もあります。
不溶性食物繊維
水分を吸収して便のカサを増し、腸を刺激することによってぜん動運動を活発にしてくれます。
その結果、便が腸内をスムーズに移動し便秘を予防します。
また、排便をスムーズにするだけでなく発ガン物質のような有害物質を吸着し、一緒に排泄してくれます。
・たんぱく質
たんぱく質は、筋肉や骨、内臓、血管や血液、皮膚など、体をつくる要素として非常に重要な栄養素です。
また、それだけでなく、酵素やホルモン、免疫抗体などのもとになります。
現代人にとってお米は重要なタンパク源の一つです。
主食を麦ご飯に変えるだけで、食物繊維・ミネラル・タンパク質も効率良く摂取することできます。
・マグネシウム・カルシウム
大麦には、白米にはほとんど含まれていないマグネシウムやカルシウムなどのミネラルも含まれています。
体の調子を整えたり、体をつくったりするのに必要な栄養成分です。
・カリウム
カリウムは、体内の余分なナトリウムを体の外に出してくれる働きにより、塩分の摂り過ぎを調節してくれます。
その結果、高血圧を予防する効果があります。
以上、私たちが普段食べている白米と比較しても、麦ご飯の栄養価がかなり高いことが分かります。
特に食物繊維は、日本人に不足している人が多く、積極的に摂取した方がよい栄養です。
今までは食物繊維=野菜のイメージが強かったのですが、麦ご飯なら主食からも食物繊維がとれます。
主食の摂取量は多いので、習慣化するとからだへの効果は絶大!
手軽に食べられる麦ご飯で、毎日の食事に栄養をプラスしましょう!
3.麦ご飯の炊き方
・麦ご飯おすすめ配合量
麦ご飯は大麦の量を自分の好みの配合バランスで炊くことができます。
初めは少なめから、慣れてきたらその日のメニューや気分に合わせて大麦や水分量を変えてみてくださいね。
・飽きずに美味しく食べるなら1.5割麦ご飯!
白米2合といつもの水加減+大麦50gと水100ml
いつものご飯・丼物・すし飯に
・もっと健康効果を期待するなら3割麦ご飯!
白米2合といつもの水加減+大麦100gと水200ml
麦とろご飯に
・食物繊維をタップリとるなら5割麦ご飯!
白米2合といつもの水加減+大麦200gと水400ml
チャーハン・カレーに
・炊く時の注意点
もち麦・うるち麦は食物繊維が豊富なので水を多く吸収します。
そのため、お米と一緒に炊く際は、商品のパッケージ記載の水分量を参考に水を足してくださいね!
大麦の量を増やすと食物繊維が多くなるため、お腹がゆるくなったり、逆にお腹が張ったり便秘になったりする場合があります。
様子を見ながら量を加減してくださいね。
・ゆで大麦
炊飯する以外に同じ用途で使える「ゆで大麦」は、大麦特有のニオイがなく使用法が多い!
パスタのようにたっぷりの湯でゆでた大麦は、スープに入れたり、サラダと一緒に食べても美味しくいただけます。
スープだと他の野菜も一緒に食べるから栄養のバランスも良くなります。
サラダだと野菜のシャキシャキと大麦のプチプチ・もちもち感を楽しめます!
また、お米に混ぜれば麦ご飯になるので、家族の中で食べたい人の分だけ、あるいは麦多めなど、好みの配合にすることができます。
ゆで麦の作り方
- 鍋に水を入れて沸騰させ、大麦を入れる。
- フツフツする程度に火を弱め、時々かき混ぜながら15〜20分ゆでる。
- 好みの硬さにゆで上がったらザルにあげ、流水でぬめりを洗い流す。
- しっかり水気を切って、容器に移す。
ゆで大麦は、冷蔵で2~3日、チルドで1週間、冷凍で1カ月程度、保存ができます。
まとめて作っておくと色々使えて本当に便利‼
ちなみに、
我が家の麦ご飯の配合は、2合に付き大さじ3杯の大麦を入れます。
少なめの配合ですが、ゆで麦を多めに作っておきます。
家族めいめいが、自分好みにアレンジして食べています。
4.麦ご飯の歴史
・麦ご飯の始まりは奈良時代
白米に大麦を混ぜて炊く麦ご飯は、今でこそ健康志向や美容意識の高い人たちに支持される健康食ですが、ひと昔前までは、白米のかさを増すためや、安価に栄養を補うために食べられていました。
日本に大麦が伝わったのは、今から約1800年前の弥生時代のころ、中国から伝わりました。
奈良時代になると広く栽培されるようになり、白米に大麦を混ぜて炊く麦ご飯もこのころから食べられるようになりました。
白米を主食としていたのは権力者や富裕層で、庶民の間では祝祭など特別な日のご馳走として食べられていたそうです。
当時の白米は今でいう赤飯のような位置づけだったんですね!
大麦はお米が育ちにくい冷夏でも育つので、お米が不作の年には、大麦により飢えで苦しむ人々が救われたとされています。
・「麦ご飯」にこだわった徳川家康
ご飯に大麦を混ぜた麦ご飯をよく食べていた人物に徳川家康がいます。
家康はとても健康を気にする人であったため、白米をたくさん食べられる身分であったにもかかわらず、健康のために麦ご飯を食べていたそうです。
しかも、米は白米ではなく五分つき(半つき)米にしていたとか。
五分つき米は、胚芽や糠(ぬか)の一部を残して精米するため、ビタミンやミネラルが残っています。
このような食事を続けたことが家康を健康にしたのでしょう。
平均寿命が40歳前後の時代に、75歳まで生きた秘訣の一つにあげられています。
天下人も健康のために麦ご飯を食べていたんですね!
麦ご飯のいいところは、普段の白米の炊飯に大麦をプラスするだけの手軽さです。
「押し麦」も「もち麦」も、どちらも白米と一緒に混ぜて炊くだけ!
そのうえ、プチプチ・もちもちした食感が加わっておいしくなる!
白米のおいしさを堪能しつつ、食物繊維と栄養をしっかり摂れる!
体によいものを無理なく、美味しく取り入れられる麦ご飯。
麦ご飯をはじめとする大麦の活用を是非とも試してみてください‼
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